三綱領五学規について

 増村朴斉先生は、建学の精神に基づき明治32年(1899年)に五条の学規を制定された。学問の第一義(根本の意義)は、身を修め、家を保ち、社会のために自分の持つ力を出し切ることであるとし、これを実践するための日常的規範を五学規として示し、生徒に諭されたものである。さらに、この日常的規範の根本となる道徳綱領として、三綱領を後に掲げられた。
 日々の生活の規範に五学規を定め、その基幹に三綱領を据えたことによって有恒学舎の精神が不動のものとなった。これを目標とし、実践することによって、永く輝かしい伝統が築かれ多くの先輩の足跡がしるされた。私たちはその歴史と精神を振り返り、古き教えを日々新たな気持ちで受け継いでいきたいものである。

三綱領
一、君子は義に喩り小人は利に喩る。
 学徳のある立派な人は正義(道徳)に敏感であるが、普通の人は、利益になるかならないかというように考えるものだ。
一、人為さざるありて而る後に以って為すあるべし。
 人はしてはならぬことを断じてしないという精神があってこそ、後、なすある力(良いと思ったことに死力を尽くす力)が出て充分に立派な働きができるものである。
一、公を先にし私を後にす。
 社会・公共の利益となることは、私利・私欲よりも先に考えてすべきものである。

五学規
一、志気充実にして操守堅固なるべし。
 「志気」とは己のなすべきことを実行する力。「操守」とは心変わりしないこと。一度心に決めたことは、気持ちを引き締め、むやみに変えてはいけない。
一、質朴剛毅の風を養い深く懦弱と軽薄とを戒むべし。
 「質朴」とは素直で飾り気のないこと。「剛毅」とは内心のしっかりしていること。「懦弱」とは心が弱くぐったりしていること。素直な心を持ち、意志が強くならなければならぬ。弱音を吐いたり、軽はずみであったりするな。
一、礼譲を重んじ虚飾の風を除くべし。
 「礼譲」とは礼儀正しくし、相手を重んじひかえめなこと。「虚飾」は内容が欠けてうわべだけ立派なこと。礼儀正しくし、うわべだけ飾ろうと思うな。
一、勤勉励精生徒たるの本分を尽すべし。
 「勤勉」とは仕事や勉強に一心に励むこと。「励精」とは精を出して励むこと。生徒は先生の指導に従って一生懸命学業に励め。
一、摂生に注意し身体の強健を図るべし。
 「摂生」とは衛生に注意し健康の増進を図ること。健康に注意し、健やかで丈夫な体をつくれ。